びまん性肺疾患のアプローチ~特発性間質性肺炎の診断

びまん性肺疾患は「肺全体が広範囲にわたって同時に侵される病気」です。症状が重くなってくると労作時の息切れ(階段・坂道での息切れ)、咳、時に熱などもみられますが、無症状であっても放置しておくと健康を大きく損なうこともあります。
炎症性疾患から感染症、時には腫瘍性疾患まで多彩な肺疾患を含んでおり、その中でどんな病気なのかの診断をつけること、そしてその結果に応じた適切な治療法を選択することが重要です。

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びまん性肺疾患の中では、特に肺の間質が侵される間質性肺炎が代表と言えるでしょう。肺の間質とは、肺胞腔内ではなく、肺の支持組織、つまり肺胞隔壁や血管やリンパ管や線維などを指しますが、ここが炎症で腫れたりむくんだりするのが間質性肺炎で、肺の収縮力や酸素吸収力が弱くなってしまいます。その結果、酸欠状態になりやすくなり、運動時に息切れが出るようになります。病気が進行すれば、咳に加えて息切れがひどくなり、時には生命にかかわる状態にまで悪化することがあります。基本的には緩徐に進行する病気ですが、感冒(ウイルス感染)などを契機として急激に病状が悪化する場合があり、これを急性増悪と呼んでいます。間質性肺炎の急性増悪は死亡率がとても高く、世界的にも問題視されてきています。 当科では、ステロイドホルモンに代表される抗炎症治療に留まらず、抗線維化治療や抗凝固療法、血液浄化療法など、最新の治療をご提供することで、この致死的な病態に対応し、良好な成績をあげています。

また他の診療科との連携も積極的に行っており、たとえば深い知識と豊富な経験を有したリハビリテーション科のスタッフとの連携で、呼吸筋力や下肢筋力の包括的リハビリテーションを御提供するなど、患者さんが社会生活に復帰するためのお手伝いを行っています。

 

このアルゴリズムのように最初に問診、身体所見、検査データでIIPs以外の間質性肺炎を除外することが最初のステップになります。

年齢、性別、家族歴、喫煙歴、職業歴、薬剤歴、環境歴(住居、ペット)、旅行歴などの患者背景にせまる問診がとても大事になります。また、自覚症状としての関節痛、筋力低下、皮疹、レイノー現象、口腔乾燥など膠原病関連の可能性はないか見ていくことも大事です。

検査ではBNP、KL-6、SP-D、抗核抗体、ANCA、RF、末梢血、赤沈、喀痰、マイコプラズマ、ウイルス抗体価を必要に応じてします。

その上で胸部CTで典型的な特発性肺線維症(IPF)の像:肺底部、胸膜直下優位、蜂巣肺などがあり、以下の4項目中3項目を満たせば臨床的にIPFと診断することができます。(最も頻度の多いIPFに限っては必ずしもBALや生検をしなくとも診断してよいということでコンセンサスが得られています)

・50歳以上
・緩徐な発症
・3か月以上の経過
・両肺野の捻髪音

気管支鏡検査

 主に胸部レントゲン上の異常陰影の診断目的に行います。一言に「胸部異常陰影」と言っても、様々な原因で起きるためです。検査は喉に局所麻酔薬を噴霧した後に口から径5mm前後の太さの気管支内視鏡ファイバーを挿入します。検査中の苦痛を軽減する目的で、当院では鎮静剤を用いて行います。気管および気管支の粘膜所見を観察し、必要に応じてレントゲン異常のある場所から、診断のための処置(洗浄、ブラシ、生検など)を行って検体を採取します。この検体から細菌学的・病理学的検査を行い、総合的に診断します。


さらに他の診療科との連携も積極的に行っており、たとえば深い知識と豊富な経験を有したリハビリテーション科のスタッフとの連携で、呼吸筋力や下肢筋力の包括的リハビリテーションを御提供するなど、患者さんが社会生活に復帰するためのお手伝いに力を入れています。

慢性閉塞性肺疾患 - COPD

どんな病気?

COPD(慢性閉塞性肺疾患)という病名は、あまり聞き慣れないかも知れません。しかし、「肺気腫と慢性気管支炎の二つを合わせたもの」と聞ければ、「その病名なら知っている」という方も多いのではないでしょうか。肺気腫と慢性気管支炎の症状は一人の患者さんに重なって現れることが多いうえに、なにより、どちらも汚れた空気を長年吸い続けた結果、発病するという、原因が同じ病気です。そのため現在は国際的にCOPDという病名で統一されています。

 COPDは進行性の病気です。初めのうちは、階段を上るなどの運動時だけ症状が現れるので「年のせい」と見過ごしがちですが、次第に軽い動作でも息苦しくなってきます。そのうち、ふだんの身体活動量はさらに低下し、食事を摂るのも大変になって栄養状態が悪化したり、肺の障害から血圧や心臓の合併症も出てきてしまいます。

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 COPDでは、肺の内部が破壊されたり気管支が狭くなって、息苦しさ、とくに息を吐き出しにくいという症状が現れます。また、多くの場合、せきやたんが長く続きます。専門的には、気管支を広げる薬を用いても1秒率(空気を目いっぱい吸った後、可能な限り速いスピードで息を吐き出して、最初の1秒間で吐き出せた量を肺活量で割った値)が70パーセント未満で、それが他の病気によるものではないとき、COPDと診断されます。

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の予防と治療

 COPDで傷付いた肺を元に戻す方法はありません。そのためCOPDと診断されたら、その時点で残っている肺の働きをそれ以上低下させないようにすることが大切です。それがCOPDの治療です。

 『どんな病気?』のところでも書きましたように、COPDの原因は「汚れた空気を長年吸い続けること」です。大気汚染や煙の出る暖房器具などが原因のこともありますが、先進国ではこれらの問題は解決済みで、原因のほとんどはタバコです。実際、患者さんの約9割は喫煙者か前喫煙者です。

 ですから、COPDの予防法はタバコを吸わないことに尽きます。そしてCOPDの治療法も、タバコを吸わないことです。実際の治療では、禁煙とともに、症状にあわせて気管支を広げる薬や痰の切れを良くする薬などが処方されることがあります。薬のほかに、息を吐くときに口をすぼめたり、呼吸器リハビリテーション(ふだん使っていない筋肉を使って呼吸をしやすくする)なども、症状の改善効果があります。ただし、それらの薬の効果は、タバコを止めることによって得られる効果に及びません。

 なお、感染症などをきっかけに病状が急速に悪化する「急性増悪」という時期があります。これをは命にかかわることもありますし、繰り返すと病気の進行が速くなります。ときには命にかかわることもありまするので、できるだけ避けなければなりません。症状が悪化したと思ったらすぐに受診することはもちろん、インフルエンザの予防接種は毎年受けてください。 また、COPDの患者さんは喫煙歴が長いことから、がんにもなりやすので、がん検診も欠かさず受けるようにしましょう。